田植え前夜
引締った川水が、
春の陽射しに はにかんで
その身構えを 解ほぐし
あまい井出水 田の土と
レンゲの緑肥を 鋤き込むと
とろりとろりの泥になり
さあ 田植えの準備ができました
どこからやってきたものか
そこらあたりの田圃から
カエルのソプラノ テノールが
鳴き声響かせ輪唱へ
田植え浮立のリハーサル
私の寝床も いつのまにやら波のよう
大きくうねる 合唱の 遠く近くに洗われて
意識は 狐の嫁入りの
小雨の中に 濡れそぼり
心ここちは たゆたいの
奥からだんだん揺れはじめ
どんどん 浸みて 拡がって
向こうのほうまで 彼方まで
私がすべてになったよう
すべてが私になったよう



